今回は「人間関係の悩みを解消する哲学思考」について考えていきましょう。参考文献は『人間関係×哲学思考-頭のモヤモヤを32人の哲学者が答えていく-』(著者:ひぐちまりさん)です。
現代では「人の悩みの9割は人間関係によるもの」といわれているそうです。ハーバード大学の研究では幸せな人生の重大要素が「人間関係」であることが示されました。またカーネギー工科大学の調査では仕事のスキルによる成功は15%なのに対して、85%は性格的要因―特に他人と関わる能力が仕事の成功に必要であることがわかりました。つまり誰と出会うか、そしてどのような関係をつくるのかという人間関係の「質」こそが、人生の質を決めるということができるのです。
本書のタイトルにもある「哲学思考」とはものごとの本質に取り組む力とされています。「宇宙はどうなっているのか」という哲学の問いに対しては天文学が答えを出しました。「人の心はどうなっているのか」という問いに対しては心理学が答えを出しました。このように哲学は全て学問の出発点となって私たち人間の生活を進歩させてきたのです。
本書では哲学の視点から人間関係の問題にアプローチすることを目的とされています。そして哲学思考から人間関係の本質に向き合うことで問題を「解消」するのです。本書で提案されているメソッドを実践することで次のような変化があったそうです。
・離婚寸前だった夫婦が一緒に旅行に行くようになり幸せに暮らしている
・上司がイヤで転職しようとしていたけど関係が変化して異例の昇進昇給を果たした
もしあなたが人間関係の質を向上させたいと思っているなら、今回の動画を参考に哲学思考という新しい視点と新しい選択肢を見つけてください。これから紹介するエンパワメントライフを手に入れることができれば、きっとあなたは才能を活かし、愛され、幸せに成功することができるようになるでしょう。
エンパワメントとは人間の可能性の探究と著者は言っています。あなたの中にあるまだ発揮されていない可能性を開花させることで人間力を発揮できます。そしてあなたが成功すればするほど周りの人たちも成功をすることができ、あなたが幸せになればなるほど周りの人も幸せになれる関係をつくることができるのです。
「賢者はチャンスを見出すのではなく作り出す」(フランシス・ベーコン)
1 なぜ人間関係が好転しないのか?
「哲学とは概念を創造することである」(ジル・ドゥルーズ)
「こんなに気を遣って接しているのに逆にこじれていく」
「私ばかりが相手に譲ってばかりいる気がする」
「言いたいことが言えなくてストレスがたまる」
「上司に理解してもらえず能力を発揮できない」
人間関係の悩みは千差万別でいずれも尽きることのない永遠の課題のように思います。このような悩みを抱えている人たちが手に取る書籍には、コーチングや自己啓発などの手法について言及されているものが多いように思われます。これらの手法は20世紀の終わりころに欧米から日本にもたらされたものです。この時代といえばバブル経済の崩壊による社会制度の大変革が起こった時です。そのため自己実現やポジティブ思考のような「個人の能力発揮」の手法が流行ったのです。
しかし著者のひぐちまりさんは哲学を学んだことでその限界に気づいたそうです。哲学の歴史で考えてみると、これらは「実存主義」の系譜にあたるものなのですが、実はその後にあらわれた「構造主義」の哲学によって既に封殺されていたのです。
「構造主義」とは「人間がどのように考えるのかはその人が生きる社会の構造によって無意識に規定されている」と考えるものです。そのため、私たちを規定している社会の構造に気づくことが大切であり、「私たちの思考を支配しているものは何か?」と考える必要があるのです。
「快楽は苦痛の半分の印象も我々に与えない」(ジェレミー・ベンサム)
人間の記憶は失敗の記憶の積み重ねであるといわれています。そのため多くの人はあらかじめがっかりすることで失敗することを避けようとするのです。著者はこれを「ガッカリ予防線」とよんでいます。まずはこの「ガッカリ予防線」を引いているかもしれないと気づくところから始まります。
「この世に真実はない。あるのは解釈だけだ。」(フリードリヒ・ニーチェ)
「唯一の絶対的真実は真実などないということだ」(ポール・ファイヤーベント)
もしもこの世に真実があると思っていると意見の相違が起こった時に、どちらかが正解でどちらかが不正解であるということになってしまいます。そして多くの人は「私は正しくて相手が間違っている」となって、相手のことを正そうとしたり説得しようとしたりすることになってしまうものです。
しかしそれがただの「解釈」であると考えてみたらどうでしょうか?そのように考えてあらためて社会をながめることができれば、そこに新しい可能性が生まれ多くの問題を解消することができるようになるのです。(そもそも問題を創り出すことをしなくなるそうです)
「自分が正しいと思いこんでいる人はなまけものだ」
「解釈のちがいは人生経験から生まれる」(ルートヴィッヒ・ウィトゲンシュタイン)
人間関係を好転させるのも全く同じなのです。多くの人は人間関係の問題を解消しようとするときに、相手に対してどのように対処するのかを考えていることは多いのではないでしょうか?しかし、それでは人間関係の問題を解消することはできないと著者の方は述べています。
まず、人間関係には大きく分けて3つの関係があることを知ってください。1つ目は「自分との関係」です。これはすべての関係の土台となるものです。アドラーは「自己に対してもつ感情が他人への態度に反映される」と述べました。自分に対して否定的な感情をもつ人は他人に対しても批判的な態度をとるものなのです。そもそも自分がよい状態でなければ誰かの役に立つことはできません。まずは自分との関係をよいものにしていくことが大切なのです。
2つ目は「人との関係」です。1つ目の自分との関係が整うことで人との関係にも変化が起きるようになります。特にエンパワメントをできる関係ができるようになるのです。エンパワメントとはお互いを勇気づけたり活かし合ったりする関係のことです。(反対はディスエンパワメントといい相手を否定し合う関係のことです)。いまの時代に求められるのは異なる価値観の人と新しい価値を生み出せる柔軟な人です。楽な関係でいることのできる友人がいることは大切ですが、成功と幸福を手に入れたければ新たな可能性が生まれる関係を築けるようにしましょう。
3つ目は「社会との関係」です。自分との関係や人との関係が好転すればおのずと社会との関係も好転していきます。自分の能力を発揮して結果を出したり成功を手に入れたりするだけでなく、「社会にどんな貢献ができるか」という高い視座や視点をもてるようになるのです。この中で最も重要なものはなんと「自分との関係」なのです。それなのに、多くの人はいきなりビジネスの成功(社会との関係)を目指してしまうのです。なぜなら、ビジネスで結果を残すことで人生が幸せになると思っているからです。
実は、著者もはじめはこのように思っていたそうです。仕事で結果を出せば自信がもてて、人との関係もうまくいくと信じていたと言います。日本ではじめてのウエディングプランナーとして1万組の結婚式をサポートするなど、ブライダル業界に新しい流れをつくったレジェンドとよばれたそうです。しかし決して著者の方は自信をえることも満足をえることもできなかったそうです。結果を出しても常に不安でイライラしていて周りとの関係もうまくいかなかったのです。(当時の部下の人からは陰で「鉄仮面」と呼ばれていたそうです…)
このように、どんなに仕事で結果を出せたとしても自分との関係がよくなければ、自分のことを否定して結局は人との関係も社会との関係もうまくいかなくなるのです。まずは「自分との関係」をよくすることからはじめてみましょう。自分がよい状態でなければ誰かの役に立つことなどできないと考えてみるのです。そして自分との関係が整うことで「人との関係」にも変化が起きてきます。なぜなら、意見が異なる人と対立が起こるのは「自分が正しい」と思っているからです。
しかし「この世界にあるのは解釈だけだ」と分かれば、違いがあるからこそ新しい可能性が生まれる関係になれると思うことができるのです。自分との関係や人との関係が好転すれば自然と「社会との関係」は好転するでしょう。なぜなら、ビジネスの成功は人との関係の中にあるからです。たしかに、「自分との関係」をおろそかにしても仕事で結果を出せる人はいます。しかし、著者の方がそうであったように、そこに人生の幸せを見つけることはできません。
「自分を新しくすれば取り巻く世界も変わる」(ルートヴィッヒ・ウィトゲンシュタイン)
2 人間関係を再構築しよう
私たちの成長には2つのタイプ―つまり「横軸の成長」と「縦軸の成長」があります。「横軸の成長」とは知識の量や専門性のことを指します。個別具体的なスキルやノウハウを身につけて結果を出すための力といえます。「縦軸の成長」とは人間としてのあり方のことを指します。抽象的思考やメタ認知のような高い視点と俯瞰的にものごとを見る力といえます。
これらについて横軸がダメで縦軸がよいというわけではありません。たしかに、これまでの社会では主に横軸の成長に焦点があてられていました。正しい答えがあってより多くの知識をもっていることが高い評価につながりました。縦軸の成長を志そうものなら「出る杭は当たれる」という目にあっていたのです。
しかし、これからの時代では縦軸の成長にも焦点をあてるべきだということです。本書で紹介されている「あり方マップ」を参考にしてみましょう。これはアメリカの精神科医デヴィッド・ホーキンズ博士の著書『パワーかフォースか』で紹介されている意識のレベルをもとに考えられたものです
①無価値
最初のレベルは「無価値」です。これはエネルギーが枯渇して自分に自信がもてない状態です。欠乏感や劣等感などをもってしまうので自分を否定したり責めたりしてしまいます。この状態を脱するためには「好き」を増やしてエネルギーを満タンにしてあげましょう。
②恐怖
2つ目のレベルは「恐怖」です。これは生命力やエネルギーが生まれるいっぽう何かにおそれを抱いている状態です。たとえば仕事などに失敗することや関係を拒絶されることなどです。このレベルでは「時間がない」「才能がない」などの不安や孤独を感じます。人から褒められても悲観的になり素直に受け取ることもできないのです。この状態を脱するためには無意識の「ない」へのフォーカスを、意図的に「ある」にシフトしていくことが求められます。
③プライド
3つ目のレベルは「プライド」です。これは自己肯定感をもつことができる居心地のいい状態です。お金や名声をえることが人生の動機となり目標達成もするので評価もされます。プライドの高さはよい面もありますが外部の評価に影響を受けるという側面もあります。自己防御的になり傷つけられると怒りや嫉妬などの復讐心が生まれてしまいます。異なる意見を自分への否定として受け取ってしまうので争いに巻き込まれがちです。この状態を脱するためにはエネルギーを他人のためにもつかうことを心がけるのです。
④勇気
4つ目のレベルは「勇気」です。これより下の状態では自分基準でしかものごとを見ることができないのですが、この段階からは俯瞰的にみることができるようになるのでここが1つの分岐点となります。学びや成長に意欲的になり不安や恐れに対しても乗り越えて成長できるパワーをもてます。自分のプラスのエネルギーを社会に還元しようとすることができるのです。さらにステップアップするためには「人生の創作者」としての自分を育てることです。
⑤受容
5つ目のレベルは「受容」です。ここでは犠牲者から創作者への転換が起こります。ものごとを善悪や正誤のような二項対立でとらえるのではなく、中立の立場から客観的にとらえる柔軟さをもつことができるようになるのです。人と争うことがなくなって他人に認めてもらう必要もなくなります。幸せはや愛は与えられるのではなく自分の中から創造されるものだと気づくのです。さらにステップアップするためには「自分を愛で満たす」ことが求められます。
⑥理性
6つ目のレベルは「理性」です。ここでは高い視座をもつことで複雑さや差異を理解することができるようになります。気をつけなければいけないことは「木を見て森を見ず」の状態にならないことです。理性は論理的に問題を解決することには向いていますが、データでは測りきれないことや矛盾を解決することには向いていません。さらにステップアップするためには大きな大義をもつことが求められるのです。
⑦愛
さいごのレベルは「愛」です。これは無条件の自他の区別のない愛のことです。愛は包括的で問題の全体像を瞬時に認識することができます。(理性は細部を扱うのですが愛は全体を扱うということです)。愛には他人のエネルギーをも引き上げることができ、愛が高めることで内側から無条件の喜びが沸き上がるようになるのです。
「真の愛は自己の幸福を追求するのではなく、他者の幸福を追求するものである」(イマヌエル・カント)
このマップを見ることで自分が今どこにいるのかを確かめて、これからどこに行けばよいのかを選択することができるようになります。「あり方」は私たちがこの世界をどのように見るのかを決めます。ビジネスの結果だけを求めるのであれば3つ目の「プライド」でも十分です。しかし怒りや嫉妬のような復讐心も生むので真の幸福をえることは難しくなります。4つ目の「勇気」以上のあり方のレベルで世界をとらえることができたら、あなたは自分の能力を発揮して輝くだけでなく周りの人たちをも輝かせるようになります。
人間は無意識でいるとマイナスエネルギーになりやすいという研究結果があるそうです。生存に直結する危険を察知するため脳がネガティブな情報に敏感になったのです。心理学の世界では人間が無意識でいる割合は95%ほどだといわれているようです。つまり1日のほとんどの時間を無意識の状態でマイナスエネルギーが出ているとしたら、力が発揮できなかったりうまくいかないと空回りをしたりするのも仕方ありません。
だからこそ無意識ではなく意図的にプラスエネルギーの習慣をつくるようにしましょう。本書にはそのための具体的な方法が示されているのでぜひ実践してみてください。
「幸福は自分の状況をどのようにとらえ、解釈するかによって決まる」(アルトゥール・ショーペンハウアー)
3 まとめ
今回は「人間関係の悩みを解消する哲学思考」について紹介しました。動画の中では紹介することができなかったこともまだまだありますので、ぜひ本書を手に取って成功と幸福の両方を手に入れてください。
「哲学は何の役にも立たない」と思われがちですが、現代社会を生き抜くためのヒントが哲学の中にはたくさんあるのです。これからも「哲学」のおもしろさを発信していきますので、ぜひゼロから一緒に学んでいきましょう。本日の旅はここまでです、ありがとうございました。
コメント