論理的思考-ロジカルシンキング-

哲学入門

1 論理的思考とは?

今回は、哲学初心者のわたしと一緒に論理的思考-ロジカルシンキング-を探求する旅に出かけましょう。哲学って、少し難しそうに感じるかもしれませんが、実は日常生活の中にも深く関わっているのですよ。一緒に考え、問いに答え、新しい視点を見つけることで、哲学は驚くほど身近に感じられるようになるのです。この旅が終わる頃には、現代社会にはびこる生き辛さの正体を知るためのヒントをきっと見つけることができるでしょう。

【論理的思考】現代ビジネス必須スキルのロジカルシンキングも原点は哲学にあった!(Re:ゼロから始める哲学生活)

論理的思考(ロジカルシンキング)とは「物事を体系的に整理して筋道を立て矛盾なく考える思考法」のことです。現代社会において論理的思考はビジネスに欠かせない必須の思考方法といえるでしょう。論理的思考を身につけることであなたには5つのメリット

①分析力の向上②問題解決能力の向上③提案力の向上④コミュニケーション能力の向上⑤生産性の向上がもたらされます

①分析力の向上とは問題を分類したり、ものごとの関係性を明らかにしたりすることです。そうすることで問題に対する適切な対応方法や解決策を導き出すことができるのです。

②問題解決能力の向上とは論理のフレームワークを使うことによって問題点やその原因を特定することです。そうすることで問題をスムーズに解決することができるのです。

③提案力の向上とは立場や価値観に左右されない論理を使い筋道を立てた説明をすることです。そうすることで自分のアイデアを相手に納得してもらうことができるのです。

④コミュニケーション能力の向上とは自分の主張を的確に伝えたり相手の主張を正確に理解したりすることです。そうすることで相互の主張をすり合わせて論点のちがいや事実と意見のちがいを明らかにしながら交渉することができるのです。

⑤生産性の向上とは論理的なフレームワークを使って問題の本質を見極めることです。そうすることで無駄なプロセスを排除することができるのです。

論理的思考を活用するためには2つの前提となる考え方を理解する必要があります。1つめは「MECE」です。Mutually Exclusive and Collectively Exhaustiveの頭文字をとったものでいわゆる「モレなくダブりなく」ということです。問題を考える上では必要な情報が過不足なくそろっていることが前提となるからです。

2つ目は「So What?」「Why So?」です。「So What?」は「つまり」という意味で結論を考える時に活用されます。「Why So?」は「なぜ」という意味で原因を考える時に活用されます。2つの問いを使い分けることが問題を解決する上でとても重要になるのです。では論理的思考にはどのようなものがあるのかを紹介します。それが「演繹法」「帰納法」「弁証法」の3つです。

2 演繹法

演繹法とは一般的なルールや法則にものごとを当てはめて結論を導き出す思考方法のことです。古代ギリシアの哲学者アリストテレスの著書『オルガノン』によって整備され近代に至るまで誰も手をつけることのない完璧なものであるとされてきました。カントでさえ「論理学はアリストテレスで完成されている」と言ったほどです。アリストテレスについてはこちらの記事をご覧ください。

代表的な例として、①全ての人間は必ず死ぬ(A=B)②ソクラテスは人間である(B=C)③ゆえにソクラテスは死ぬ(A=C)という3段論法があります。中世においては大陸合理論の哲学者(デカルトやスピノザ)たちが演繹法によってものごとの真理を解明しようとしました。大陸合理論の哲学についてはこちらの記事をご覧ください。

19世紀になって高校の数学で習うド・モルガンの法則のように記号や式を使って推論を数学的に分析する記号論理学があらわれはじめました。バートランド・ラッセルやウィトゲンシュタインによる分析哲学の登場です。ウィトゲンシュタインについてはこちらの記事をご覧ください。

論理的といえばこの3段論法がピンとくる方も多いと思います。誰にとってもわかりやすく納得することができる思考方法である一方もともとの命題やルールにあやまりがあると結論もまちがったものになるというデメリットが存在しています。

3 帰納法

帰納法とは複数の事実から一般論等のルールや法則を導き出す思考方法のことです。たとえば①ソクラテスは死ぬ②プラトンは死ぬ③アリストテレスは死ぬというように複数の事実を積み上げた結果として「全ての人間は必ず死ぬ」という結論を導き出すのです。つまり演繹法と論理の展開方法が反対なのです

帰納法は中世の哲学者フランシス・ベーコンによって演繹法ではものごとの説明はできても知識を増やすことはできないと批判して「知識は力なり」と言って実験や観察を通して知識を増やす方法として考案されました。ベーコンを祖とする哲学の潮流をイギリス経験論といい大陸合理論とイギリス経験論は西洋思想の大きな2つの哲学思想として君臨しました。イギリス経験論についてはこちらの記事をご覧ください。

そもそもの命題が明らかでない場合は演繹法を使うことができないので帰納法をつかうことで問題を解決することができる可能性がある一方もし積み上げる事実にあやまりがあれば(死なない人間がいたとすると)出される結論もあやまり(人間は必ず死ぬとは限らない)となるように帰納法による結論は必ずしも真実であるとは限らない点に注意が必要です。

4 弁証法

弁証法とは対立する2つの物事を組み合わせることでより良い結論を導き出すための思考方法です。たとえば①車は便利だから使いたい②車は環境によくないからやめるべきという対立する命題に対してどちらかをとるのではなく③環境に配慮した車を生産しようという結論を導き出す思考方法です。これによって誕生したのがプリウスです。

弁証法で有名なのは合理論と経験論を統合させたカントを源流とする「ドイツ観念論」を完成させたドイツの哲学者ヘーゲルの弁証法です。ヘーゲルは弁証法によってよりよい結論を導き出すことを止揚(アウフヘーベン)といい歴史はこのように進歩していくと考えたのです。ドイツ観念論についてはこちらの記事をご覧ください。

5 論理的思考のフレームワーク

論理的思考を具体的に活用するためには代表的な2つのフレームワークを使うことがおすすめです。1つ目は「ピラミッドストラクチャー」です。これは結論や根拠をピラミッド形式で表現したものであり

ピラミッドの頂点に「最も伝えたい主張」を置いてその根拠をピラミッドの下層部に配置していくものです。ピラミッドストラクチャーは複数の事実をもとに1つの結論を導き出すことから帰納法で考える時に活用することになるでしょう。

2つ目は「ロジックツリー」です。これは問題をツリー形式に分解して問題解決の方法を導き出すためのものです。ロジックツリーには3種類のツリーがあります。

①要素分解ツリー

問題や課題を「全体」として捉えた後で「部分」や「要素」に分解して物事を整理していくロジックツリーのことです。全体の見通しは立っていても個々の問題を把握できていない場合などに活用されます。

②原因究明ツリー

問題や課題を発生させる原因が何かを究明するロジックツリーのことです。問題の原因となるものの「量と質」を把握したい場合などに活用されます。

③問題解決ツリー

目的に対して「いま何をすべきか?」といった論点を導き出すために有効なロジックツリーのことです。全体と部分の関係を捉え目的の質や量を整理する時に活用されます。

論理的思考を有効なものにするためには大きく2つのフレームワークを活用できるようにしていきましょう。

6 論理的思考を身につけるためには?

まず論理に筋道を立ててできる限りシンプルにすることを心がけましょう。筋道とは論理の骨格であり論理の展開方法ともいえるものです。時間の流れや因果関係を明確にしてシンプルに論理を展開することが肝要です。

次に事実をもとに論理を展開することを心がけましょう。事実と意見をきちんと区別して論理を展開しないと「それってあなたの感想ですよね?」という人に丸めこまれてしまいます。エビデンスや数字を活用することが相手にも納得してもらうための1つの有効な方法になるでしょう。

さいごに目的を意識することが大切です。論理的思考はあくまで問題を解決したり結論を導き出したりするための手段です。話し合うことや相手を言いくるめることに注力しすぎて本来の目的を見失わないようにしなければいけません。

ほかには論理的思考と似た言葉にクリティカルシンキングやラテラルシンキングというものがあります。クリティカルシンキングとは「批判的思考」という意味であり問題を考える時に批判的な目線(本当にこれで正しいのか)で問いかけを行うのです。ラテラルシンキングとは「水平思考」という意味であり常識や既存の方法にとらわれずに新しい手法を模索する考え方のことです。これらの思考方法とロジカルシンキングはお互いに補完する関係にあるのです。ロジカルシンキングで導き出された結論に対して批判的に考えたり新しい発想を求めたりすることでさらに有益な結論にたどり着くことができるでしょう。

7 まとめ

ビジネスの現場で活用される論理的思考のもとには偉大な哲学者たちの思想が眠っていたことをわかっていただけたでしょうか?「哲学は何の役にも立たない」と思われがちですが現代社会を生き抜くためのヒントが哲学の中にはたくさんあるのです。これからも哲学の実践的な活用方法について紹介していく予定ですのでぜひご期待ください。本日の旅はここまでです、ありがとうございました。

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